明日から介護業界で働くので、掲示板などで評判を調べていた。
前日まで調べなかった理由は明らかで、誰もやりたがらない仕事だからいいことが書いてあるわけがないと思ったからである。
ネットは広大だが、9割が罵詈雑言で満ちていて見るに値しない。
あえて読もうというときはよっぽど疲れているか、自分に自身が持てないときなので精神科を受診したほうがいい。
明日から始まる20代後半未経験介護士生活。
先輩方の意見として参考にしようと思ったのが、『みんなの介護 コミュニティ』と5ch介護・福祉板。
5chのほうはわりとまともで、次の介護報酬改定について話し合っていた。
主に文句だがそれは仕方がない。
現状経営が厳しいのに、要介護1・2の利用者を受け入れる余裕などあるはずがなく、破綻する事業所が続出するだろうと書かれていた。
俺もその通りだと思うし、国もそのつもりでやっているのだと思う。
田舎で店が潰れると、跡地に入るのは謎中華料理屋か老人ホームである。
中華料理屋は中華コミュニティの資本で回しているだろうから放っておいても問題ないが、老人ホームの経営は税金でやっている。
人間誰しも年をとるから老人に罪はないのだが、少なくとも現在日本に経済的ダメージを与えているのは中国人より老人である。
国が出張って潰すのも無理はない。
みんなの介護は露骨というか、若かった。
曲解したうえで表現するならば、「辞めたいんだけど!」「あいつうざいんだけど!」「毎日もうどうしようもなくつらいんだけど!」という内容が大半を占めていた。
人手不足の中で実行不可能な量の業務を与えられ、できなかったらできなかったで処罰されたり減給されたり昇進に響いたりはしないけれども、「ちょっと裏で何か言われる」
あるいは「直接回りくどい表現で茶々を入れられる」
よく「将来崩壊する業界トップ◯◯」という記事があるが、介護に関してはとうの昔に崩壊した業界だと思っている。
だからこそ未経験だろうが犯罪者だろうが誰でも採用する。
それほど誰も来ないからだ。
ある種俺は介護業界に就職することを贖罪だと思っている。
社会に背いて生きていたツケを払うために、介護業界で働くことで罰を受けるのだと。
ネットの闇に毒されすぎだろうか? と思った。
だから俺は釣り合いをとるために、〝真面目〟な人たちの〝意識高い〟意見も知ろうと論文を漁った。
海外の研究でも、現場で倫理的課題に取り組むために、現場職員自身がEthics educationとTime for ethics discussionを必要としており、また取り組むときによく使用されるものとして、Ethics peer groups、Ethics consultation、Ethics committeesなどが挙げられている。現任教育では、このような手法を活用することによって問題解能力を高めていくことが望まれる。――角田ますみ 介護施設に勤務する介護福祉士の倫理的問題の認識や対処と倫理教育の現状
当然、角田先生は俺よりも断然頭がいい人間だろうから、腰をぶっ壊して明日にも仕事を辞めたいと思っている職員が、生命倫理委員会を開き協議したところで何の効果もないことはわかっていると思う。
俺は大学に行っていないから分からないが、どうやら論文では意味の限定された専門用語を使う際は原語を用いるらしい。
誤解を恐れず言うが、俺が明日出勤して急に「Ethics consultation」をしましょうと言ったら、頭のおかしい奴だと思われるに違いない。
その時点で介護現場でEthics consultationは起こり得ないのだ。
モナコとかいう小国を除いた場合、日本の高齢化率は世界一位だ。
膨大な税金が高齢者福祉に使われている。
医者は毎日効くのか効かないのかわからない薬を処方し、介護士はうんちとおしっこを取っている。
それなのに高齢者のための「倫理委員会」という一概念すら編み出せなかったので、海外から輸入した。
介護施設における殺人事件があれだけ取り沙汰されたのに、「倫理見直したほうがいいよねー」と誰一人言い出さなかったので、外国人が考えたことを広めることにした。
高齢者の数が世界随一になったので、日本より高齢者の少ないデンマークやスウェーデンから介護の仕組みを学ぼうとした。
こと観念ということに関して、日本人が自力で編み出すことはないのだと思う。
少なくとも生命倫理に関しては、他人の世話になってまで長く生きることを是か否で決着を出せてから論じるべきだ。
今後中国が少子高齢社会を迎えるという。
日本の二の舞いになるという意見があるが、絶対にそうはならないと思う。
寝たきりで生きることを是とする文化ではないから。
社会にそこまでの余裕がないから。
税金で100歳まで生かして苦しんでいるのは日本だけだから。